「今、元気でいられる。」ことの凄さと難しさ
バヌアツで、「デング熱」という病気にかかった話。
(写真は、バヌアツの村の幼稚園での手洗い場面(ボクのめいっ子))
2月末のある朝、
突然、39度の高熱が出た。
その日はもう1学期が始まっていて、
ボクがする授業もあったんだけれど、とても立ち上がれなくて、休ませてもらった。
(休むこと、休憩すること、のんびりすること、だらだらすることが大好きなバヌアツの人は、
”休む”ことに関して、ビックリするくらい寛大。)
学校が終わると、いろんな先生が様子を見に来てくれて、励ましてくれた。
バヌアツにも様々な民間療法があって、
風邪の時には、こうすると治る!と村人が教えてくれた。
①沸騰させたお湯にレモンの葉っぱを浮かべて、そのお湯を抱き抱えながら毛布にくるまる。
(蒸気が良いらしい。)
②マンゴーをたくさん食べる。
③アイランドカカエ(伝統的な食べ物)をたくさん食べる。
④スプライト(緑色のパッケージの炭酸ジュースのあれ)をたくさん飲む。
⑤カバ(お酒のような伝統的な飲み物)を飲む。(笑)
⑥海に行き、海水を鼻から思いっきり吸い込む。(真面目に言ってた。)
他にもたくさん教えてくれた気がするけれど、熱でボーッとしてて覚えてない。
その日の夜には、校長先生が首都のポートビラまで車で送ってくれて、
JICAが用意している隊員用のドミトリーに泊まることにした。
(首都には、
様々な種類の新鮮な野菜、肉、魚、調味料、簡単に食べられるレトルトのもの、などなどが売っているスーパー、
病院、薬局、JICA隊員をサポートしてくれるJICAバヌアツ事務所があるから、避難しよう!という感じ。)
(これは、隊員の仲間たちが作ってくれた泣くほど美味しいおかゆ。)
次の日の朝、病院に行ったら、
ストレスだと診断された。
(ほら、子どもって原因なく時々、高熱出すでしょう。
って説明だったと思う。え、子ども?)
それからはしばらく、
熱が下がらず、あまり食欲もなく、ただただ寝て過ごした。
5日くらい経って、まだ熱が下がらなかったから、
バヌアツ国立病院の救急を受診させてもらった。
(この病院はかなり大きくて、なんとバヌアツで唯一、レントゲンもあるらしい!使っているかは微妙らしいけれど。
国立病院の救急だけど、担当医はオーストラリアの医学生らしくて、
先進国の基準で考えると、機材も少なく、衛生的にも良くはない。)
血液検査をしてもらったところ、
(バヌアツ国内で血液検査はできないから、採った血液をオーストラリアに送って検査してもらうらしい。)
「デング熱」にかかっているということが分かった。
赤道付近の温かい国でよくみられる病気だけど、
最近は、気候変動の影響で、北半球の様々な国でもみられるようになってきてるらしい。
日本でも、2014年、代々木公園を中心に160人くらいの人が感染したっていうのがニュースになってた。
この病気には、治療するための薬はないらしい。
ただ、幸い、しっかり栄養をとって、安静にしていれば、自然に治る。
と医師から聞いて、その時はホッとしてしまった。
けど、もしかしたら、
若くて体力もあって、病院で点滴も受けられる「ボク」は、自然に治るってことなのかなと後から思った。
バヌアツの村の現状を考えると、
みんながみんな病院に行けるわけじゃない。
エキペ村でも、
(長年病気を抱えていたんだろうけれど、診断や治療を受けずに、)
原因不明で、突然亡くなる、おじいちゃんやおばあちゃんが何人もいた。
世界中の開発途上国で、
原因も分からず亡くなっている人は一体どのくらいいるんだろうと考えてしまう。
ボクも、はじめはただの風邪だって診断されたように、
症状もインフルエンザと似ているデング熱は、無症候のことも多いらしく、
たくさんの人が間違った診断を受けてるみたい。
(WHOの統計だと、デング熱の患者数は、年間で推定3億9000万人いるらしく、そのうち、症状があるのは9600万人らしい。)
このウイルスからかかる病気を防ぐ方法はシンプルで、
『蚊に刺されないこと』
一見、簡単に聞こえるけど、これって簡単じゃない。
どれだけ小まめに虫除けスプレーしても、
寝るときに蚊帳をしても、
家の周りの水場に注意して、蚊の幼虫が育つのを防いでも、
やっぱり刺される。
(ボクが特別蚊を引きつける体質なのもあるかもだけど。)
蚊に刺される可能性を0にすることって、できないよね。
いくら普段は健康で、めったに病気にかからない人でも、
ウイルスへの感染は、防ぎようがないし、
治療薬がない中、(状況によっては病院にも行けずに)、
病気と懸命に闘っても勝てない人が一体何人いるんだろう。
普段から、もちろん分かってるつもりではあるんだけど、
病気になって初めて、健康でいることの本当の凄さが分かる。
「いつもいつでも健康でいる。」って、
たぶん、思っているより、ずっと難しくて、ずっと素晴らしいことだと思う。
ちなみに、その後のボクは、
デング熱だって分かってから2、3日後に、
緊急搬送の飛行機でオーストラリアシドニーの病院に運ばれ、
シドニーの病院に1泊、
ホテルで1週間くらい療養して、
すっかり元気になりましたとさ。