ぼくの行く道

青年海外協力隊2019年度1次隊(小学校教育)バヌアツ

得られるものと失われてくもの

元々、校長先生もやっていたという

ボクのお父さんと同い年くらいの同僚の先生と

2人でワインを飲みながら、ちょっと深い話になった。

 

 

バヌアツには、

数多くのカスタム(伝統のこと)がある。

 

83の島があって、

100以上の言語のある国だから、

それぞれの故郷に、

それぞれの伝統がある。

 

 

ココナッツの殻の剥き方から、

伝統料理の作り方まで。

 

ナイフの研ぎ方から、

畑作業に使うクワを、硬い木から作る方法まで。

 

ヤムイモの収穫の仕方から、

伝統的なカバの作り方まで。

 

伝統的な部族の踊り方から、

自然の材料だけで建てる家まで。

 

風邪を引いた時の対処法から、

黒魔術まで。

 

自分たちの生活の全てを

自分たちの手でやってきた人たち。

 

 

それは、

おじいちゃんからお父さんへ

お父さんから息子へ、

 

同じように、

おばあちゃんからお母さんへ

お母さんから娘へ、

 

教えられて受け継がれてきたらしい。

 

 

もちろん今も村で、

若者は年上の人たちから多くのことを学んでいる。

 

今の日本の何十倍も地域の繋がりが強いから、

守られてきている伝統も多いように思う。

 

 

けれど、その先生は、

昔からあった伝統が失われてるって言っていた。

 

はっきりと、

「失われている」って言っていた。

 

 

お金でバヌアツをはじめ大洋州の国での影響力を上げようとしている某国、

交通事故や事件は増え、首都の街での生活は忙しくなっていく一方、

村の道には、首都で買ってきたお菓子のゴミが転がり、

今の小さい子たちは、村の言葉を少ししか喋れない。

 

生活が便利になるにつれて、

かかるお金も増えるから、

自分たちの暮らしから離れて、近くの国に出稼ぎに行く人も増え、

 

生活が便利になるにつれて、

自分たちでできることを、しなくても済むようになるから、

自分たちができることが少なくなっていく。

 

 

日本やアメリカ、オーストラリアやニュージーランドなどの国からの支援に感謝しながらも、

バヌアツの伝統、自分の村で昔から続いてきた生活・知識・技術に危機感を持ってる

この先生の感覚や考え方がすごいと思った。

 

話を聞いていて、

今やボクらの世代は、本やTVでの知識しかないけれど、

150年前くらいまで国を鎖して伝統を育み、農業社会だった日本でも、同じように悩んだ人たちがいたんじゃないかなと思った。

 

 

エキペ村の次の世代はどうかというと、

 

首都は忙しいから好きじゃないと言って、

おじいちゃんたちから伝統をたくさん聞いて、

村の畑作業やシンプルな生活を愛している若者もいれば、

 

首都でワインやウォッカを買ってきて、

朝から酔っ払い、夜にはフォーウ!と大声をあげながら、歩き回る若者もいる。

 

 

ボクにはどうにもできないけれど、

どうか「遺っていくもの」が多くあればいいなと思う。

 

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※ちなみに、この先生、すごく穏やかな人なんだけど、

あんまりワインを飲み過ぎると、息子さんへの説教がものすごくなることを、

この次に一緒に飲んだ時に知った。